簡単なスピーカーアンプ

電子回路の中で簡単にスピーカーを駆動したい場合は、ナショナルセミコンダクター社のLM386Nが簡単です。
増幅率が20倍でよければ部品の数はたったの4個だけで済みます。



C1はスピーカーへのカップリングコンデンサです。C1の数値は低域のカットオフ周波数を決定します。
カットオフ周波数fcは次式で求まります。

カットオフ周波数=1/2πCR 〔Hz〕  Rはスピーカーのインピーダンス抵抗

よって、C=159000/(f〔Hz〕・R〔Ω〕) 〔μF〕

カットオフ周波数は口径50ミリ程度の安価なスピーカーであれば100Hz前後あれば充分です。
8ΩのスピーカーであればC1は220μFとなります。

口径70ミリや100ミリの大きめなスピーカーであれば20Hzとして迫力ある音楽再生を目指します。
8Ωのスピーカーであれば1000μFとなります。

C2は電源ラインのインピーダンスを低下させ、ICの動作安定のために欠かすことはできません。100μF〜1000μFあれば充分です。
わたしはC1とC2を同じ値にしています。
このC2はICに出来るだけ近づけて取り付けませんと、取り付ける意味がありませんので注意です。

下表はLM386Nの端子1、8間にコンデンサと抵抗を接続した場合のゲインを示したものです。



Rの値 無接続時 10μF+1.2KΩ 10μF+180Ω 10μFのみ
ゲイン 20倍 50倍 100倍 200倍


ゲインを大きくすると残留ノイズ(サーッと聞えるノイズ)が増加すると同時に異常発振を起こしやすくなりますので出来るだけゲインは低くして使うと成功率が高くなります。

また、ICとスピーカーの配線が長くなる場合は下図のように、スピーカー端子にCRをIC近くに取り付けます。
この場合のCは0.1μF〜0.47μF、Rはスピーカーのインピーダンスと同程度の値とするといいでしょう。10Ωや4.7Ωなど。




次に東芝のTA7368PGについての回路図を下図に記します。



上記回路のゲインは約100倍(40dB)ですが、下図のRfを追加することで調整は可能です。しかし、25倍(28dB)以下で使うと異常発振を起こしやすくなるとデータシートに記されています。



下表はLM386NとTA7368PGの主なスペックを比較したものです。
LM386NはLM386N-1、LM386N-3、LM386N-4があり、多く流通するLM386N-1について記します。
尚、LM386N-1のオリジナルはNS社ですが、その他のメーカーでもセカンドソース(MJN386D)があり、同等に扱えます。

LM386N TA7368PG
使用電源電圧範囲 4〜12V 2〜10V
無信号時の回路電流 4mA(6V時) 6.6mA(6V時)
スピーカ出力 325mW(6V、8Ω負荷) 450mW(6V、8Ω負荷)
ゲイン 20倍〜200倍(26dB〜46dB) 約25倍〜約100倍(28dB〜40dB)
入力抵抗 50KΩ 27KΩ


どちらも同じようなスペックで電池を使った回路に最適といえます。乾電池2本の3VではTA7368となりましょう。
尚、リプルに対しては弱く、AC電源では定電圧として充分にリプルを除去しておかないと無信号時にハムが気になります。

私個人が感じるところではLM386Nは高域よりで華やかな音、TA7368Pは全域でバランスが取れて聞き疲れしない音といったイメージがあります。
総評して私個人としてはTA7368Pが好きです。

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