マイコン使用によるプログラムや正確な信号生成を使わずに、一般に入手しやすい汎用部品を使ってPWM信号を生成し、LEDの調光を行なわせるものです。
タイマー555と別途コンパレーターを使って、デューティー比0%〜100%のPWM信号を生成するもので、複数のPWM信号を周波数を独立させることなく可変・生成できます。
タイマー555のコンパレーター部は555の名前の由来である内部抵抗の5KΩ-5KΩ-5KΩ(C-MOS版タイマー555は100KΩ-100KΩ-100KΩ)により、1/3Vと2/3Vに設定されています(図1)。
【図1】
図2にタイマー555を使った基本的な発振回路を示します。
【図2】
発振周波数:fは.....
f=1.44/(R1+2R2)・C1 〔Hz〕
抵抗を〔KΩ〕、コンデンサを〔μF〕で計算するならば...
f=1440/(R1+2R2)・C1 〔Hz〕
で求まり、入手しやすい部品定数で組んだ場合のおおよその周波数を下表に示します。
R1=1K R2=10K |
R1=1.5K R2=15K |
R1=2.2K R2=22K |
R1=3.3K R2=33K |
R1=4.7K R2=47K |
R1=6.8K R2=68K |
R1=10K R2=100K |
R1=15K R2=150K |
R1=22K R2=220K |
R1=33K R2=330K |
R1=47K R2=470K |
R1=68K R2=680K |
R1=100K R2=1M |
|||
C1=0.001μF | 68.6KHz | 45.7KHz | 31.2KHz | 20.8KHz | 14.6KHz | 10.1KHz | 6.86KHz | 4.57KHz | 3.12KHz | 2.08KHz | 1.46KHz | 1.01KHz | 686Hz | ||
C1=0.01μF | 6.86KHz | 4.57KHz | 3.12KHz | 2.08KHz | 1.46KHz | 1.01KHz | 686Hz | 457Hz | 312Hz | 208Hz | 146Hz | 101Hz | 68.6Hz | ||
C1=0.1μF | 686Hz | 457Hz | 312Hz | 208Hz | 146Hz | 101Hz | 68.6Hz | 45.7Hz | 31.2Hz | 20.8Hz | 14.6Hz | 10.1Hz | 6.86Hz | ||
C1=1μF | 68.6Hz | 45.7Hz | 31.2Hz | 20.8Hz | 14.6Hz | 10.1Hz | 6.86Hz | 4.57Hz | 3.12Hz | 2.08Hz | 1.46Hz | 1.01Hz | 0.686Hz | ||
C1=10μF | 6.86Hz | 4.57Hz | 3.12Hz | 2.08Hz | 1.46Hz | 1.01Hz | 0.686Hz | 0.457Hz | 0.312Hz | 0.208Hz | 0.146Hz | 0.101Hz | 0.0686Hz |
そこで、上図の発振回路を組んだ場合のC1の電位(A点の電位)は1/3Vcc〜2/3Vccの間で充放電をしています。
このあたりはタイマー555のデータシートでも掲げられており、よくご存知でしょう。このことは図1の内部構成からも明らかです。
下の写真は図2(C1=1uF,R1=1K,R2=10Kとして約69Hzにした)を組んでC1の電位(A点の電位)を実際に観測したものです。
波形を拡大して観測すると、当然ではありますが「山」と「谷」は素晴しく尖っています。
これは三角波と似ており(以後、疑似三角波と記述します)、この電位を基にコンパレーターに掛ければPWM信号を得ることは容易であることは理解できます。
この疑似三角波の振幅幅は1/3Vcc〜2/3Vccの間で不変ですから、コンパレーターのボリュームによる電位設定も容易になります。
即ち、ボリューム値が10KΩならば上下の抵抗も10KΩにすればボリュームのスライダー範囲は1/3Vcc〜2/3Vccとなり、コンパレーター出力から得られるPWMのデューティー比は0%〜100%の範囲をフルカバーできることになります(図3)。
さらに電源電圧が変動してもC1の電位と、ボリューム設定範囲の1/3Vcc〜2/3Vccは不変ですからPWM波のデューティー比はほとんど変動しません。
【図3】
フルカラーLEDを調光するならば図4のようになります。
ところで、C1の電位を複数のオペアンプに与える場合、オペアンプの入力抵抗が無視できなくなることが生じます。
C1の充放電はR1とR2で行なわれますから、R1とR2はオペアンプの入力抵抗よりも充分に低く設定しなければならないことは言うまでもありません。
図4では、C1=1uF,R1=1K,R2=10Kとして約69Hzにしています。光を拡散すればチラツキは感じなくなります。
例はアノードコモンのLED回路になっていますが、P-ChのMOS-FETを用いればカソードコモンにできます。
【図4】
図4は回路例は単純にMOS-FETをON/OFFしましたが、オペアンプで定電流回路を形成すれば2回路入りオペアンプを効率よく利用できます(図5)。
Rsに生じる電位とツェナーダイオードをVRで分圧した電圧が同じになるよう調整します。
このままの回路ではツェナーダイオードの公称電圧を得るIZDがオペアンプの吐出し電流でまかなえない場合が考えられるのでトランジスタを介すか、電源電圧を定電圧にしてツェナーダイオードを排除するなどして下さい(要実験・確認)。
その他、LEDの調光に限らずパワー素子やファイナル段を工夫すればモーターコントロールにも応用できます。
この場合は発振周波数も変更してみて確認して下さい。
【図5】