おしゃべりアラーム回路...page.1/3
概要
すでに紹介しているデジタルアラームクロックのアラーム音はホロホロブザーによるものですが、これをメッセージ録音回路にして音声による楽しいアラーム回路に変更するものです。
例えば...
「おはよう。今日は誕生日だね!おめでとう。」
「今日も早く帰ってきてね。愛しているよ」
「今夜はハンバーグが食べたいな」
などと楽しいデジタルアラームクロックに仕上げることができます。音声はいつでも変更できます。
キーデバイスは音声録音IC:ISD1820PYとオーディオアンプIC:HT82V739、および2個のフォトカプラーです。
回路図
ISD1820の動作
キーデバイスになるISD1820(台湾:ヌヴォトン社製)について簡単に記述しておきます。
ワンチップ・メッセージ録音再生ICで、発振回路・マイクアンプ・オートゲインコントロール・フラッシュメモリ・フィルター・スピーカーアンプを1つのパッケージに集積されたICです。
録音された内容は電源を切っても最大100年間保持され、繰り返し10万回の再記録ができるとあります。
待機中の回路電流は0.5μAとなっています。
ISD1820の基本回路と動作は次の通りです。
WEBに多くの説明はありますが、イマイチ理解できませんでしたので実回路で確かめた動作を記述しておきます。
RECスイッチ
(録音スイッチ)押下(ON)している間は録音状態になる。
OFFにすると録音を停止し、内部メモリに録音完了のEOM(エンドオブメッセージ)を書き込む。
ONのままでもメモリフルになると録音を停止し、EOMを書き込む。PLAYEスイッチ
(プレイ・エッジ)押下(ON)すると録音内容を再生する。スイッチをOFFしても再生は継続し、EOMになると再生が終わる。
ONのままでもEOMになると再生が終わり、繰り返し再生はできない。PLAYLスイッチ
(プレイ・レベル)押下(ON)すると録音内容を再生し、OFFすると再生がストップする。次にONすると最初から再生する。
ONのままにするとEOMで再生が終わり、繰り返し再生はできない。RECLED
(録音LED)録音時はRECLEDが点灯。録音を停止またはメモリフルなると消灯。
再生時は消灯しているが、再生終了後に一瞬だけ点灯する。抵抗Rosc ここに接続する抵抗の値によって録音可能な時間やフィルタ特性が決まる。
Roscの抵抗値 録音時間 サンプリングレート フィルタ帯域幅 80KΩ 8秒 8.0KHz 3.4KHz 100KΩ 10秒 6.4KHz 2.6KHz 120KΩ 12秒 5.3KHz 2.3KHz 160KΩ 16秒 4.0KHz 1.7KHz 200KΩ 20秒 3.2KHz 1.3KHz
以下にISD1820の各ピンの説明を記しておきます。
ピン番号 名称 機能 1 REC
RecordHレベルにすると録音動作になり、録音中はREC端子をHレベルを維持しておく。
メモリーフルまたはREC端子をH→Lレベルにすると録音を停止し、メモリにEOM(End of Message)を書き込んでICはスリープ状態になる。
REC端子はPLAYE端子やPLAYL端子より優先され、音声再生中でもREC端子がHレベルになると録音動作になる。
この端子はIC内部でプルダウンされており、誤動作防止のため84mSの遅延を有している。2 PLAYE(エッジ・アクティブ)
Playback Edge-activatedHレベルのパルスが入ると再生を開始。。
再生はメモリ最終番地またはEOM(End of Message)まで継続し、再生後はICはスリープ状態になる。
この端子はIC内部でプルダウンされており、誤動作防止のため84mSの遅延を有している。
このためHレベルのパルス長は84mSより長くしなければならない。
Hレベルのままにしておくとスリープ状態でも消費電流が増加するので注意。3 PLAYL(レベル・アクティブ)
Playback Level-activatedHレベルにすると再生が開始され、Lレベルにすると再生を停止してICはスリープ状態になる。
Hレベルを維持すると、ループ再生はされず、メモリ最終番地またはEOM(End of Message)まで再生後はICはスリープ状態になる。
この端子はIC内部でプルダウンされており、誤動作防止のため84mSの遅延を有している。
Hレベルのままにしておくとスリープ状態でも消費電流が増加するので注意。6 AGC
Automatic Gain Control小さな音から大きな音まで広い範囲を補償するためプリアンプの利得(ゲイン)を自動調整している。
公称値の4.7uFで満足できる動作とあります。4 MIC
Microphone Inputマイク入力になっています。コンデンサを介してマイクを接続します。
入力抵抗は10KΩとの事です。5 MIC REF
Microphone Referenceプリアンプの反転入力である、との事。 7,9 SP-,SP+
Speaker Outputs8Ωスピーカーをカップリングコンデンサ無しで駆動することができる。
ただし、今回の回路はカップリングコンデンサとボリュームを介して別アンプでスピーカーを駆動します。12 FT(フィールドスルー)
Feed ThroughHレベルにするとマイク回路とスピーカー駆動回路が直結され、マイク入力から入った音はそのままスピーカーを駆動する。
今回そのような使い方はしませんのでLレベルにしておきます。
尚、この端子はIC内部でプルダウンされているので未接続のままで使います。13 RECLED
Record LED output録音中はLレベルを出力。
再生時は再生終了直後にLレベルのパルスを出力します。10 ROSC
Resistor Controlled Oscillator inputROSC端子とVss間に接続する抵抗値によって録音時間、サンプリング周波数、フィルター特性を変更できます。 8,14 VSSD,VSSA デジタル回路とアナログ回路のGNDバスに別けることでノイズの発生を最小限にすることができる。
いずれも最短距離で配線します。11 VCC
Voltage Supplies+3v〜+5vの電源で動作します。
回路の説明
各ICはフォトカプラによって動作させました。
音声録音IC:ISD1820PYはフォトカプラ:PC1がオンすると繰り返し再生を行なうようにしています。
オーディオアンプIC:HT82V739はフォトカプラ:PC2がオンするとCE端子(チップイネーブル端子)を利用して動作すようにしています。
フォトカプラ:PC1とPC2は発光ダイオード側を直列にして1個分のIfで済むようにしました。フォトカプラのVfは約1.2VのVfなので2個直列でも2.4Vですから5Vでオペレートしている回路で充分ドライブできます。
発光ダイオード側を並列にしてもブリーダ抵抗を見直すことで同じ動作になりますがIfは2倍となるので制御する側の負担になるのではないかと考えました。
フォトカプラの発光ダイオード側は接続方法でLアクティブにもHアクティブにも対応可能です。既に掲げているデジタルアラームクロックのアラーム出力はアラーム時にHレベルになるようプログラムしましたのでフォトカプラの発光ダイオード側はカソードをGNDに落としてHアクティブでフォトカプラがONするようにしています。
またアラーム時に動作させるだけでなくプッシュスイッチによって録音内容を確認(音量確認)できるように、ダイオードによるOR回路を形成しました。
コントロール入力端子からみたVfは2個のフォトカプラ(1.2V×2)とOR回路のダイオード(0.6V)で約3Vになり、ブリーダ抵抗を1KΩにしているのでIfは2mAになります。
2mAでは足りないかと思われますが、0.5mAでも動作したことを報告しておきます(TPA624使用時)。
前記のISD1820PYの基本回路において、再生スイッチだけで自動的に繰り返しの再生はできませんが、再生終了時にREC-LEDが一瞬点灯することを利用して繰り返し再生されるようにしています。
REC-LEDが一瞬だけ点灯するのは出力レベルがH→L→Hに変化するということなので、L→Hに変化する時のHエッジを利用して再度再生させています。
フォトカプラ:PC1のエミッタにコンデンサ:0.01uFが接続されていますが、これはフォトカプラのトランジスタ側の浮遊容量や配線の引き回しによってフォトカプラがOFFしてもISD1820PYが動作停止にならないことがあったためです。
オーディオアンプIC:HT82V739はチップイネーブル端子(CE端子:そのデバイスを有効にするか無効にするか)を持ったICで、CE端子をLレベルにすると動作します。
アラームが鳴っていない時はアンプを無効(非動作)にすることで、「サーッ」といった無信号雑音の不快音を気にしないで過ごすことができます。
今回はCE端子をフォトカプラ:PC2でコントロールし、非動作時は47KΩでプルアップしておきます。
プルアップの抵抗値は1MΩとしても非動作になりましたがノイズを受けやすかったことを報告しておきます。