パワーアンプ付き電子ボリューム...page.1/10
はじめに
既に掲げている「D級オーディオパワーアンプ」回路に電子ボリューム回路を付加して、ミニオーディオアンプとして紹介します。
使い方はとてもシンプルでEEPROM設定によりオリジナルな楽しいオーディオアンプに仕上げられます。
作り応えのある自作アンプになると思いますので、ゆっくり慎重に作業を進めて下さい。
概要
電子ボリュームIC:LM1972Mはマイクロコントローラーで制御します。マイクロコントローラーにはPIC16F886を用いました。
PIC16F886のプログラムメモリは充分にあるので電子ボリュームだけのプログラムだけでなく、入力セレクターやポップ音防止機能などのプログラムを付加しました。
EEPROM設定変更で4入力まで拡張できます。
以後、既に掲げている「D級オーディオパワーアンプ」と組み合わせて製作することを前提で記述します。 その他のパワーアンプ回路を用いる場合は、その利得を20dB前後に合せておいて下さい。 更に、電源電圧を変更する場合はミューティングリレーのコイル電圧・回路を見直して下さい。 |
ブロック図
スピーカーを駆動するだけでなく、コントロール出力を設けてプリアンプ(コントロールアンプ)としても使えるようにしてみました。
オリジナルサウンドを与える目的で6dBのアンプを追加しました。
これは、ボリュームとパワーアンプ回路だけのシンプルすぎる回路は、パワーアンプの利得を上げても、力感がなく面白みのない平らなサウンドになりがちだからです。
6dBのアンプに用いるオペアンプの交換で好みのサウンド創りが楽しめます。
電源回路はCDプレーヤ:2Vrmsのダイナミックレンジを確保するため正負5Vで稼動しました。
回路図
PDFで掲げます。
回路の説明
入力は2系統としましたが、設定変更により4系統まで拡張できます。
切り替えは小信号用リレーを用いました。リレーの動作はメークビフォアブレークになるようプログラムしてみました。
入力された信号は電子ボリューム:LM1972Mにより音量調整し、バッファアンプ、6dBアンプを通り出力します。
6dBアンプは反転増幅回路にしました。
反転増幅回路は入力抵抗が低いので、電子ボリュームの減衰量を忠実にさせるため高入力抵抗のバッファアンプを設けます。
6dBアンプを非反転増幅回路にすれば高入力抵抗になるのでバッファアンプは不必要ですが、過去の経験から発振トラブルに陥る確率が高くなりがちです。
ところで、6dBアンプを設けた理由は、ブロック図でも記述したように力感のあるサウンドを狙うためです。
トータルでオーバーゲインになっても、パワーアンプのゲインだけで仕上げると面白くないサウンドになってしまう私の経験です。
出力された信号は内蔵するパワーアンプ回路に接続するほか、コントロール出力として外部端子に出しました。
これによりコントロールアンプとしても使えるようになり、外部アンプとしてパワーアンプやヘッドホンアンプなどと接続できます。
電子ボリューム:LM1972Mは0dB〜-78dBの範囲を127段階でコントロールできます。
今回はロータリーエンコーダーで設定することにしましたが、127の範囲をコントロールするとグルグルと何回転もさせる必要があり実用的でないために64ステップにしました。
電源回路は少しでもダイナミックレンジを確保するためにチャージポンプIC:MAX660により正負5Vの2電源で稼動させました。
このため、アンプの入出力に用いるカップリングコンデンサに静的な電位差は殆どないので極性の無いノンポーラタイプの電解コンデンサを使います。
コントロール出力に使ったカップリングコンデンサは、低い入力抵抗のアンプに接続しても低域のレスポンスを確保するために10μFにしてみました。
電子ボリューム:LM1972Mの入力電圧範囲については次項の「部品の概要」を見てください。
また、チャージポンプIC:MAX660のスイッチング周波数についても次項の「部品の概要」を見てください。
マイクロコントローラーにはミューティング回路のリレーON/OFF信号を設けました。
今回はパワーアンプのスピーカー出力に接続しましたが、製作する回路によって変更を加えて下さい。
尚、ポップ音を気にしない場合は利用しなくても構いません。
下図は応用例です。
マイクロコントローラーのプログラムは電子ボリュームICの駆動の他、入力セレクターリレー、ミューティングリレー、レベルメーターの機能を持たせました。
電子ボリュームICの駆動以外の殆どをオリジナルにカスタマイズできるようにしてみました。
どのように変更できるかは「EEPROMアドレスマップ」を参照して下さい。きっと楽しんで頂けると思います。
レベルメーターの動作は小音量でもメーターが振れたほうが楽しいと判断し、電子ボリュームICに入力される信号を捉えて、ボリュームレベルに関わらずメーターを振らせるようにしました。
音楽ソースの出力電圧の差によってメーターの振れが異なることを避けるために入力セレクター毎にメーター感度を調整できるようにしました。
電源電圧について
回路中でリレーは3個用いており、入力セレクターには小信号用小型リレーを用いています。
このリレーのコイル電流(定格電流)は20数mAと小さいので5Vラインに接続しています。
もう一つは、ポップ音防止のためのスピーカー出力ラインに用いたパワーリレー(小型の部類ですが)で、このリレーのコイル電流(定格電流)は70mAを超えます。
この電流をON/OFFすると配線の引き回しによってはマイクロコントローラーの動作に影響があると判断し、3端子レギュレーターの入力(12V)に接続し、更にリレーを駆動するMOS-FETも別途電源回路基板に移しました。
リレーのコイル電圧は電源電圧に合わせた12V品を用います。
言い換えれば、リレーのコイル電圧に合せて電源電圧は12Vとしています。
12Vとした理由は12VのACアダプターがもっとも多く出回っており入手性に優れていると判断したからです。
既に紹介している「D級パワーアンプ」は10V〜30Vで稼動し、12Vの電源電圧では数ワット程度の出力しか取り出せませんが音楽を楽しむには不満は感じない筈です。
しかし、もっとパワーを出したいという方は電源電圧を15Vや18V、24V、28Vと高くはできますが、それに合せてリレーの定格電圧も必ず変更して下さい。
定格電圧よりも異常に高い電圧を加えるとリレーのコイルが発熱して故障の原因になったり発煙の恐れがあり危険です。
尚、リレーの定格電圧を高くすると定格電流(コイル電流)は減少してきますので、リレーを駆動するためのMOS-FET(2N7000:ドレイン電流200mA)を変更しなくても大丈夫です。
また、下図のようにリレーに直列に抵抗を入れて定格電圧に合せる方法もあります。
リレーはある程度バラツキがあっても動作するので、抵抗は算出した値の近似値で構いません。
この方法は電源電圧が高すぎると抵抗の発熱が無視できませんので注意して下さい。
既に製作を終えて電源電圧を上げたいという場合に実践してみて下さい。
12Vリレーのコイル電流を予めデータシートで調べておきます。
今回はオムロンのMY2F(DC12V用)を用いて、このリレーの定格電流(コイル電流)は約73mAです。
このリレーを用いて、電源電圧を18Vに上げて稼動させる場合の抵抗:Rを求めると...
抵抗:Rの抵抗値は、
(18V−12V)/73mA=82.19Ω
抵抗:Rの消費電力は、
(18V−12V)×73mA=0.438W
よって、1/2W品は定格ギリギリで心配ですから、1W品以上の、82Ω となります。
※オームの法則の説明ですね...
電源電圧を固定せずに自由に使いたいという場合は別途リレーのコイル電圧に合せた3端子レギュレーターを設けるといいでしょう。
当然ながらリレーのコイル電流とリレーを駆動するMOS-FET(2N7000はドレイン電流200mAまで)を見直して下さい。