「EジスPen」を使ってみる...page.1/3


EジスPenとは...

「EジスPen」とはナミックス株式会社より開発販売される商品名です。
導電塗料で、基板に描画して乾燥させることで配線パターンが簡単にできてしまうという商品です。
ユニバーサル基板で接続したい部分にサインペンを書く感覚で、簡単に結線ができるのです。
私が感じたメリットを挙げますと...

1. 趣味としてプリント基板の製作は手間がかかるが、EジスPenを用いることでプリント基板と同等な専用基板に短時間で仕上げられる。(作業時間の短縮・成功率の向上)
2. 配線はEジスPenで描画されているのでパーツの取り付け、交換が容易になる。(メンテナンス性向上)
3. アースパターンも描画することで容易に作成でき、安定した動作環境も可能となる。
その他、何と言っても初めて電子工作を始めようとする方には大変便利なツールとなるのは間違いありません。



必要とする基本材料...

1. EジスPen 必須です。使う前によく振ること。
2. スルーホール基板 EジスPenで描画した箇所は半田が綺麗に乗ってくれませんので、
従来のユニバーサル基板(片面にランドがある)のように裏面にEジスPenを使うのは困難と思われます。
このため、スルーホールのユニバーサル基板(半田めっき処理されていないものを推奨)を用いて部品の実装面にEジスPenで結線する箇所を描画します。
また、パーツ半田時にコテ先で、EジスPenで描画した箇所を傷付けるリスクが低くなります。
スルーホール基板とは両面に半田付けするランドがあり、表裏は小穴を通して導通しています。



半田メッキ処理されたスルーホール基板では後のパーツ交換が困難とのことです。これはEジスPenで描画したところとランドの接触面に半田が潜り込み、クラックが生じる恐れがあるためです。
このため、EジスPenと同時に販売される「EZサーキット用ユニバーサル基板」と呼ばれる専用基板もあります。
この専用基板であればパーツ交換で不具合はないと思われます。
次ページ(page.2/3)から紹介するラジオ工作では、この専用基板を使っています。

但し、パーツ交換はしないことを前提で、多く市場に出回っている半田メッキ処理されたスルーホール基板でも問題なく動作したことを報告しておきます。このことは最後のページ(page.3/3)で紹介します。

3. ドライヤー EジスPenで描画後は直ちに乾燥させることを推奨しています。
いろいろな乾燥の仕方が紹介され、熱風乾燥機やホッとプレートによる乾燥を推奨しています。
私は安全面とコストからドライヤーによる乾燥とし、温風を20分程度当てます。
尚、自然乾燥は不可です。



4. テスター 乾燥後は部品を実装する前に導通があるか必ずテスターで確認します。
ここを怠ると失敗の元になります。
導通不良となった場合はリード線などで通常配線することになります。
EジスPenによるショートはカッター等で削り、除去します。
5. 冷蔵庫(冷凍庫) EジスPenは冷凍庫への保存を推奨しています。
常温で4週間以上では効力が低下するとの事らしいです。



EジスPenの描画の仕方

下図イラストと写真の様に、ユニバーサル基板のランド間を描画します。描画は、即ち電気配線していることと同じです。
使用前に「カラカラ」とよく振って内部のインクを均して使いましょう。







EジスPenのテスト(抵抗値)

配線を導電塗料で行なうというと心配されるのが、その抵抗値でしょう。
そこで、手持ちのユニバーサル基板で試しに30個のランドを直線にEジスPenで描画して両端をテスターで抵抗値を計ってみました。
初めて描画した直線の抵抗値は約6Ωと高めです。これは初めて使ったので勿体無いという気持ちで薄めに塗布したからです。

 

2回目はランド間を数往復してキチンと塗布したもので、その抵抗値は約1Ωとなりました。

 

30個のランドで約1Ωですから、1個当たりのランド間の抵抗値は約0.031Ω(31mΩ)となります。
この抵抗値は一般の電子工作では全く問題にならない抵抗値と言えましょう。

但し,一般のリード線の配線と比較すると抵抗分は高いと言えますから、抵抗分を無視できない場合はそれなりの実装技術が必要となる時もあります。
特にリニアアンプ類の電源バイパスコンデンサや、基準電圧を生成するツェナーダイオード、トリガー信号を扱う回路では発振、リプル増加、波形のサグなどが起きにくいよう工夫し、必要によってリード線等による通常配線することもあるでしょう。


余談ですが、塗布し過ぎると乾燥するまでに塗料が広がってしまってショートし易くなるので注意。
実回路を作る前に練習が必要と思われます。





ユニバーサル基板でEジスPenを使うシーン

EジスPenは描画した導電塗料を乾燥させるために高温を与えますからパーツ取り付け後にEジスPenの使用はお奨めできません。
これは高温でパーツにダメージを与えるからです。

ユニバーサル基板(万能基板)は、目的の性能を満たす回路に仕上げるまで回路修正を何度も行なう場合に使ったり、既に決まった回路を一台、又は数台だけ組み立てたい場合に使われたりします。
前者の場合は大幅な回路修正が何度も起こるのでEジスPenの使用は困難です。
後者は組む回路が決まっているのでEジスPenは大変に役に立ちます。

即ち、電子工作をこれから始めようとする方や、決まった回路を簡単に仕上げる場合に、EジスPenは大変便利なツールであることは理解できましょう。



ラジオを作ってみましょう...

実際にラジオ回路をEジスPenを使って作ってみましょう。
EジスPenの説明をメインにして次ページから紹介します。
EジスPenの使い方がよく判るように記述したつもりです。


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